印刷用語集
凸版(とっぱん)
凸版印刷(とっぱんいんさつ)は、印刷技術の一つで、文字や図形を彫り込んだ版の表面にインクをつけ、それを紙などの印刷対象に押し付けて印刷する方法です。名前の通り、「凸」つまり盛り上がった部分がインクを受け取り、それを転写します。この技術は、古代から使われている最も伝統的な印刷方法の一つです。
凸版印刷の仕組み
版の作成: 凸版印刷では、まず印刷したいデザインや文字を凸型(盛り上がった部分)として版に彫り込みます。この版は、金属や木材、樹脂などが材料として使われます。
インクの適用: 版全体にインクを塗りますが、インクがつくのは凸型の部分だけです。凹んだ部分にはインクがつかないため、印刷したくない部分にはインクがつかないようになっています。
印刷の実行: インクがついた凸版を紙などの印刷面に強く押し付けることで、デザインや文字が転写されます。凸版が紙に押し付けられることで、文字やデザインが印刷されるのです。
凸版印刷の特徴
立体感のある印刷: 凸版印刷では、版の凸部分が紙に直接触れるため、少し凹凸が感じられる立体的な印刷が可能です。このため、名刺や高級感のある招待状などに使われることがあります。
耐久性のある版: 金属や硬い素材で作られる凸版は非常に耐久性があり、大量の印刷にも耐えます。昔はこの特性が生かされ、新聞や書籍の大量印刷にも使われていました。
インクの濃淡: 凸版印刷では、押し付ける力の加減やインクの量によって印刷の濃淡が変わることがあります。このため、手作業での微調整が必要で、均一な印刷が求められる場合には技術が必要です。
凸版印刷の歴史
凸版印刷は、木版画や活版印刷の形で古くから存在していました。中国では、7世紀に木版印刷が登場し、世界最古の印刷技術の一つとされています。15世紀にはヨハネス・グーテンベルクが金属製の活字を使った印刷機を発明し、これが西洋における凸版印刷の発展の大きなきっかけとなりました。
現代での使用例
現在では、デジタル印刷やオフセット印刷が主流となり、凸版印刷はあまり一般的ではなくなりましたが、特定の用途ではまだ使われています。
名刺や封筒: 凸版印刷の特有の立体感を活かしたデザインが好まれる場合。
高級書籍やアートブック: 特にこだわった質感を出すために、限定版や高級感のある印刷物で使われることがあります。
ラベルやステッカー: 凸版印刷の耐久性を活かして、長持ちするラベルが求められる場合に使用されます。
凸版印刷の利点と欠点
利点:
印刷物に立体感や高級感が出る。
版が耐久性が高く、大量印刷に向いている。
欠点:
デザイン変更が難しく、版を作り直す必要がある。
印刷の均一性が難しく、高度な技術が必要。
凸版印刷は、古くから伝わる伝統的な技術ですが、特定のニッチな用途ではその独特の風合いが今でも愛用されています。